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アイルランドの苦難

北アイルランドを中心に、IRAの爆弾テロなどで一昔前までは日常的にニュースになっていたアイルランド紛争。カトリックとプロテスタントの宗教紛争と思われているふしもありますが、その実際は植民地の独立闘争です。イギリス領となったままの北アイルランドを巡るこの紛争は、イギリスによる殖民の歴史の残り火に他なりません。今でもアイルランド側の姿勢としては、北もひっくるめてアイルランドと考えていますから、地図なども全島をまとめて描かれます。でも一旦北アイルランド側に足を踏み入れれば、国旗はユニオンジャックでポストの色もアイルランドの緑からイギリスと同じ赤になり、テレビの天気予報もイギリスと北アイルランドだけを予報しますし、南の共和国側の部分は画面の地図から消えていたりするのです。

このような傷跡を残すことになった原因は、1000年近くにも及ぶ長い植民地としての歴史です。言葉を奪われ、改宗を迫られ、痩せた土地へと移動させられたり虐殺されたり、その間に起こった悲劇は数知れません。そこへ更に追い討ちをかけたのは、1800年代中ごろに続いたジャガイモ飢饉です。当時のアイルランドでは、農作物の中でも麦はイギリスに納められ、アイルランド人はジャガイモを食べていました。(今でもジャガイモは主食です)飢饉当時も麦は収穫できていたのに関わらず全てイギリスに送られ、アイルランド人は多くが飢え死にました。貧しさから逃れようと、膨大な数の移民を送り出したのもこの頃です。アイルランド移民は映画「タイタニック」でも背景となっていましたから、ご存知の方も多いでしょう。アメリカの故ケネディ大統領が、その頃からの移民の子孫であることも有名な話です。

新天地を求め、なけなしのお金をはたいたアイルランド人達は、ダブリンからまずイギリスのリバプールへと渡り、そこからはほとんど奴隷か家畜同然の貧しい船旅に苦しみながらアメリカへと移り住んで行きました。しかし、アメリカにおいてもアイルランド人の地位は極端に低く、黒人といっしょに天秤にかけらている当時の戯画が残っています。鉄道工事で肉体労働に就いたり、警官や消防士などの危険な職業にアイリッシュが多いのも、そんな歴史があるからです。ダーティー・ハリーのキャラハン警部は、苗字からして確実にアイリッシュ系ですし、ダイハードの主人公、ジョン・マクレーン警部もスコティッシュかアイリッシュの名前でたぶん同じケルト系。職業もさることながら、彼らのアナーキーで一匹狼なキャラクター自体がまさにケルト的・・と、かの司馬遼太郎氏も綴っていたのを記憶しています。