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自然の懐の中、静かにたたずむハイクロス

【キルデアの隠れスポット、ムーンのハイクロス】
キルデア州にある小さな村、ムーンにあるハイクロスは、少々マイナーながら、レリーフに描かれた人物像がたいへん可愛らしく、姿もスマートでなかなか見目の良いハイクロスです。手元の資料と地図をたよりに、行けども行けども目ぼしい目印は無く不安になりかけたころ、地元の人が手作りで作ったと思われる素朴な看板に遭遇。そこには確かにムーンのハイクロスの名とケルト十字架の絵が!わくわくしながら車を止めます。

ハイクロスに会うためには、農場の石垣の内側に入らなければなりませんでしたが、訪れる人が自由に出入りできるよう、石の塀の真ん中に深いV字型の切れ込みが作ってありました。周囲は農場で牛が自由に歩き回っているため、彼らを侵入させないための工夫かもしれません。よいしょとまたいで脚を抜き、敷地内に入ります。

【デフォルメされた愛らしいモチーフ】
まるで道祖神のような愛らしさ溢れる緑の中、崩れかけた廃墟に包まれるように背高のハイクロスが立っている姿は、静寂そのものでした。柱の部分にくっきりと彫られた12人の弟子達、ダニエルとライオン、パンと魚などの聖書モチーフは、絵本の図柄のように可愛らしく単純化されています。十字架全体の形も、すっきりとスリムでバランスが取れていて、こってりと泥臭く異教的な要素が強いハイクロスとしては、ずいぶんモダンな印象です。1000年を超える年月の間、この小さな空間は、時を止め眠るようにこの姿をとどめてきたのでしょうか。

このムーンのハイクロスは、現在は周囲の石壁などがきちんと修復され、屋根もかけられて、以前より風情は少々なくなりましたが、遺跡保存のためにはやむを得ないこと。必要最小限にとどめた手入れには少なくとも好感が持てます。キルデア方面にお寄りの際は、N9沿いにあるムーンのハイクロスもぜひ訪れてみてください。