唯一の大都市ダブリン
アイルランドで都市と呼べるところは、首都ダブリンと、もう1つ南の都コークぐらいのものでしょう。ダブリンは、少ないアイルランドの人口の、なんと3分の1が集まっている大都市です。バイキングが隆盛していた時代より、アイルランドの中心的な都として栄えていたダブリンには、ヨーロッパでも指折りの由緒ある大学のひとつトリニティカレッジ、古代ケルト人の遺した精緻な装飾品を数多く展示した博物館、アイルランド独立への歴史を物語る数々の建物や、いにしえの文豪達から近年アイルランド発の優れたミュージシャン達に至るまで、世界に名を馳せたアイルランドの名士たちゆかりの様々な名所など、見どころ一杯です。
ダブリンの街並みは、アイルランド中の風景の中でも特別で、正直を言えばイギリスの地方都市といった方がよい風情だといわれますが、その中でも特徴的なのはジョージア様式と呼ばれる街並みのとてもカラフルな扉です。この扉は、一つ一つバラバラでしかも大変鮮やかな色をしているのに関わらず、全体の調和がとてもきれいでダブリンの絵葉書や写真集などにもよく登場します。元々は、無学で番地の数字も読めない辻馬車の御者達のために、色で番地の所在を示したものと聞きましたが、
ダブリンをはじめアイルランドでは、パブや店舗の看板といい、住宅の壁や扉や窓枠といい、非常にカラフルな色合いのものが珍しくありません。しかもその色彩は自然の風景にも良く溶け込んでいるし、とても素朴な可愛らしい印象を与えます。それはちょうど、街頭売りの花屋や果物屋のワゴン、そして家々の窓辺を飾る花々のイメージにも似て、凄くお洒落とは言い難いけれど、気が利いていて心が浮き浮きしてくるような楽しさがあります。ダブリンの扉は、そんなアイルランドの色彩センスが凝縮されたものとも言えるのではないでしょうか。
地方とのあまりに激しいその差から、当のアイルランド人達からもダブリンだけはアイルランドじゃないと言われたりする事もあるダブリンは、古くはバイキング達の根城、そしてイギリスによる長い長い圧政の拠点でもあった場所ですが、今は多くのダブリンっ子が住み、そして愛する街です。美しい地方の手付かずの自然の風景に象徴される、素朴なアイルランドの風景とあわせて、ぜひ時間をかけて観て欲しい街、ただ賑やかなだけではない、綺麗なだけでもない、とてもセンスが良いともいえないし、辛い歴史も多く刻みこんでいるけれど、気取らず不思議と懐かしい気分にさせる街・・ダブリンはそんなところです。
