ディングル半島、うらおもて
そこかしこに古代遺跡が散在しているディングル半島を行くと、ヨーロッパの学生たちや悠々自適の年配夫婦など、サイクリングや徒歩でじっくり巡り歩く人々に幾度も出会います。その横をレンタカーで行き過ぎるのが少々はばかられてしまいますが、忙しい日本からの旅行者にとって、トレッキングやサイクリングでこの地を巡るというのは、誰にでもできる事ではありません。そんなレンタカーでの旅の思い出のひとつとして、ディングル半島の外周を走った時の体験談を少々。
【蜂蜜売りの女の子】
オガム石やケルティッククロスを訪ねながら走るディングル半島の海岸線の風景は、リング・オブ・ケリーの時の続きでそれは美しく、入り組んだ海岸線間近まで迫る緑の牧草地と、空を映すにび色の海とのコントラストを楽しみながらのんびり行くと、小さな部落や農家の門の前で、自家製の蜂蜜を売っている女の子やお年寄りに何度も出会います。ダンボールの看板を足元に置き、蜂蜜の小瓶を片手に微笑みかけます。思わず購入したくなりましたが、ついに買わず仕舞いに終わり、未だにちょっと後悔しています。今度行ったら迷わず買ってみよう。
【牧歌的ハプニング】
そうこうするうちに、前方の道には黒白まだらの牛たちの姿が。「アイリッシュ・ラッシュアワー」と自虐ネタで称される牛の群れです。同じ方向に向かって道一杯に広がりながら歩いています。幸い、牛飼いのおじさんが群れを先導していたので、徐行しながら少しずつこの群れを追い抜いていきます。フロントグラスの前に並ぶ牛たちのお尻はとても大きくて、真横に並ばれると相当な迫力です。でもみんなとても大人しく、車の邪魔をするようなことはありません。ちょっとの辛抱で、ほどなく群れを追い抜く事ができました。冷静なつもりでしたが、抜けるとハンドルを握る手にじっとりと汗が・・(笑)
【豹変する風景の妙】
半島の半ばを貫く国道を通って、いよいよ北側に向かいます。予備知識として頭には入れていたものの、景色の変化に思わず叫び声を上げてしまいます。アイルランドの風景の中でも荒涼とした西部海岸地方の定番となっている、果てしない岩盤の地が、目の前に忽然と姿を現したのです。南側と北側で景色がガラリと変わるディングルの自然を肌で実感。断崖にへばり付く岩棚のような道をくねくね曲がりながら走っていくのは、それなりのスリルです。緑豊かな東側の地を終われ、シャノン川以西の不毛の地へと移住させられたアイルランド人達の歴史に思いを馳せつつ、石だらけの道を目的地のトラリーの町へと向かったのでした。