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月世界とも称される異形の地形、バレン高原

ごつごつとした石灰岩だらけのカルスト地形ゴールウェイ、エニスと、西部地方お勧めの町を紹介したところで、今度はこれらの町から見て歩ける、各地の見どころを訪ねてみることにしましょう。最初は、クレア州一帯に広がる不思議の大地、バレン高原です。

エニスの街のあるクレア州の中でも、石だらけの荒地を示すバレンという名を付けられたウェスト・クレアの一角は、独特の不思議な光景と珍しい植生、古代遺跡など、興味深いスポットのある高原地帯。ゴルウェイ方面から海沿いに南下していくと、高台に明るい灰色をしたその姿を現すバレン高原は、その異様さからもまず見まごうことは無いでしょう。

石灰岩の剥き出した高原の地表は、3億年という気の遠くなるような時を経て今に至るもの。深く切れ込んだ無数の細かい溝が岩盤を複雑に分断し、あたり一面またとない不思議な光景が広がっています。クレバスのような亀裂の中には、強風を免れた極わずかの土が溜まり、小さな花々が健気に咲いています。白や黄色、目の覚めるような藍色、薄紫、愛らしいピンク・・・良く見ればまるでお花畑のように色とりどりの花たちが、月面のように無機質な岩盤にへばりつくようにして風に揺れています。これらの花は、多くがアイルランド特有といわれる珍しい高山性植物で、しかもアイルランド中でここだけにしか見られないものが殆どなのだそう。異次元のように荒涼としたバレン高原ですが、植物愛好家や研究者にとっては、またとない宝の山でもあるのです。

バレンの見渡す限りに広がる特異な風景に包まれて、吹き抜ける風に身を任せていると、荒涼と淋しい中にも心安らぐような不思議な気持ちに満たされてきます。アイルランドの自然に触れているといつも感じるこの気持ちは、なかなか言葉で表現することができません。でも、人を引きつけて止まない何か強い力がそこにはあるような気がします。